なでしこIPA その六(Tsumari Brewing/スタイル:IPA)琥珀の光に映る、妻有のやさしさと芯の強さ

旅の始まり ― 湯沢で一息

偶然が紡ぐ、
秋のセレンディピティ旅 第2部

非日常への扉をくぐったあの日。旅はまっすぐカニへ向かうはずだった。けれど最初に導かれたのは、緑の町・湯沢――。そこから物語は、寄り道を重ねてゆく。
新幹線の扉が開いた瞬間、ひんやりとした山の空気が頬をかすめた。湯沢駅に降り立つと、夏の終わりを思わせる緑の匂いが胸いっぱいに広がる。

非日常の入口を抜け、最初の寄り道は湯沢から。
山あいに広がる小さな町で、旅は静かに動き出す。


改札を抜けた先で友人と合流し、ハンドルを預けて車に乗り込む。窓の外に広がるのは、青々とした山並みと、ところどころ風に揺れるススキ。秋はまだ浅いが、その気配が確かに混じっていた。
車中のセレンは、虹色のカギしっぽを小さく揺らしながら外を眺めている。まだ能生のカニにはたどり着いていないけれど、旅はすでに動き出していた。

seren

ねえ、最初の目的はカニよ? 忘れてないでしょうね

もちろん。でも寄り道も悪くない。今日はその方が楽しいはずだよ

セレンは鼻をひくつかせてふんっと横を向いた。けれど、そのしっぽはもう、これからの偶然を待ちきれないように揺れていた。
車はやがて湯沢高原ロープウェイの終点へ。展望台に立つと、緑に包まれた山々が幾重にも重なり、そのふもとに街並みが小さく広がっていた。

緑のかたまりに包まれた町。
セレンは「写真じゃ伝わらない」と不満顔。
seren

高いところって気持ちいいわね。……でも、この写真だと山がただの“緑のかたまり”に見えない?

しーっ、言わないで。実際は風が気持ちよかったんだから

セレンは得意げにしっぽをひと振りし、虹色の光を散らした。
お昼は評判の蕎麦屋「田畑屋」へ。暖簾をくぐると、香ばしい香りが漂い、席に運ばれてきたのは舞茸の天ぷらと艶やかに並んだへぎ蕎麦。

サクサク感は写真じゃ伝わらない?
セレンは「ずるい」と目を光らせる。
艶やかに並ぶへぎ蕎麦。
セレンは「一口ちょうだい!」としっぽを揺らした。
seren

舞茸って、写真にすると地味だけど……実物はサクサク! 一口ちょうだい!

猫に天ぷらは無理。ほら、蕎麦もダメなんだってば

seren

ちぇっ。写真映えもしないし、味見もできないなんて不公平だわ

ぷいっと横を向くしっぽが、悔しそうに、でもどこか楽しげに揺れていた。
湯沢でのひとときは、目的地へ向かう途中の寄り道にすぎない。けれど、その小さな寄り道こそが偶然を呼び込み、旅に色と深みを添えていくのだ。

seren

ねえ、あの地図にあった“美人林”って名前、ちょっと気になるわ。寄り道してみない?

……結局、君のしっぽに導かれてる気がするな

セレンはにやりと笑い、虹色のしっぽを誇らしげに揺らした。

旅の余韻に添えて

新潟・湯沢は冬のスキーだけでなく、夏から秋にかけても魅力あふれる寄り道スポットです。湯沢高原ロープウェイを使えば、展望台から町と山並みを一望でき、季節ごとの表情を楽しめます。
また、名物のへぎ蕎麦は布海苔をつなぎにした新潟独特の味わい。舞茸の天ぷらとともに味わえば、山の恵みをそのまま感じられます。

湯沢高原ロープウェイの位置は下の地図からご覧いただけます。

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