
― ふと立ち寄る寄り道 ―
偶然が紡ぐ、
秋のセレンディピティ旅 第2部
非日常への扉をくぐったあの日。旅はまっすぐカニへ向かうはずだった。けれど最初に導かれたのは、緑の町・湯沢――。そこから物語は、寄り道を重ねてゆく。
新幹線の扉が開いた瞬間、ひんやりとした山の空気が頬をかすめた。湯沢駅に降り立つと、夏の終わりを思わせる緑の匂いが胸いっぱいに広がる。


改札を抜けた先で友人と合流し、ハンドルを預けて車に乗り込む。窓の外に広がるのは、青々とした山並みと、ところどころ風に揺れるススキ。秋はまだ浅いが、その気配が確かに混じっていた。
車中のセレンは、虹色のカギしっぽを小さく揺らしながら外を眺めている。まだ能生のカニにはたどり着いていないけれど、旅はすでに動き出していた。
ねえ、最初の目的はカニよ?
忘れてないでしょうね
もちろん。でも寄り道も悪くない
今日はその方が楽しいはずだよ
セレンは鼻をひくつかせてふんっと横を向いた。けれど、そのしっぽはもう、これからの偶然を待ちきれないように揺れていた。車はやがて湯沢高原ロープウェイの終点へ。展望台に立つと、緑に包まれた山々が幾重にも重なり、そのふもとに街並みが小さく広がっていた。




セレンは「写真じゃ伝わらない」と不満顔。
高いところって気持ちいいね。
……でも、
この写真だと山がただの
“緑のかたまり”に見えない?
しーっ、言わないで。実際は
風が気持ちよかったんだから
セレンは得意げにしっぽをひと振りし、虹色の光を散らした。お昼は評判の蕎麦屋「田畑屋」へ。暖簾をくぐると、香ばしい香りが漂い、席に運ばれてきたのは舞茸の天ぷらと艶やかに並んだへぎ蕎麦。


セレンは「ずるい」と目を光らせる。


セレンは「一口ちょうだい!」としっぽを揺らした。
舞茸って、写真にすると
地味だけど……実物はサクサク!
一口ちょうだい!
天ぷらは無理。
ほら、蕎麦もダメなんだってば
ちぇっ。写真映えもしないし、
味見もできないなんて不公平だわ
ぷいっと横を向くしっぽが、悔しそうに、でもどこか楽しげに揺れていた。
湯沢でのひとときは、目的地へ向かう途中の寄り道にすぎない。けれど、その小さな寄り道こそが偶然を呼び込み、旅に色と深みを添えていくのだ。
ねえ、あの地図にあった
“美人林”って名前、
ちょっと気になるわ。
寄り道してみない?
……結局、君のしっぽに
導かれてる気がするな
セレンはにやりと笑い、虹色のしっぽを誇らしげに揺らした。
旅の余韻に添えて
湯沢高原ロープウェイ
新潟・湯沢は冬のスキーだけでなく、夏から秋にかけても魅力あふれる寄り道スポットです。湯沢高原ロープウェイを使えば、展望台から町と山並みを一望でき、季節ごとの表情を楽しめます。また、名物のへぎ蕎麦は布海苔をつなぎにした新潟独特の味わい。舞茸の天ぷらとともに味わえば、山の恵みをそのまま感じられます。
湯沢高原ロープウェイの位置は下の地図からご覧いただけます。
ふふ、今回はビールおあずけ。
でも……旅の寄り道って、
そういうものよね。










