
潮風とともに、駅をめざして
門脇の景色をあとにして、ゆっくりと歩き出す。潮風の気配が、まだ少しだけ残っている。緩やかな坂道をのぼりながら、視線は自然と先へ。静かな別荘地。どこか遠くの国に来たような、不思議な感覚。ふと見上げると、大きく広がる山のかたち。―あれは、さっき見えていた大室山。
さっきから、気になってたんだ
あそこ、行ってみたいな!
そのひと言で、次の行き先が、
静かに決まる。
雄大な山を見上げながら
城ヶ崎駅でひと息つきながら、観光ガイドをめくる。そこにあった「大室山リフト」の文字。さっき見上げた景色と、ゆるやかにつながる。予定は、もう関係ない。なんとなく気になった方向へ、そのまま進んでみる。
おなかすいてるけど
でも、今はこっちの気分だよ
少しだけ笑って、そのまま次の場所へ。
黄金のススキに迎えられて
バスを降りて、見上げる。そこにあったのは、言葉よりも先に心をつかむ景色。山の斜面いっぱいに広がるススキ。光を受けて、きらきらと揺れている。まるで、風そのものが見えるようだった。足を止めたまま、しばらく動けない。


……きれいだね
ちょっと、見てたいな
そのまま、時間がゆっくり流れていく。
空中を進む、風の時間
リフトに乗る。足元には、広がるススキの波。風が吹くたびに、やわらかく形を変えていく。上へ、上へ。景色が少しずつ遠ざかって、同時に、視界がひらけていく。


なんだか、飛んでるみたい
このまま、どこかに行けそう
その言葉どおり、体も気持ちも、少しだけ浮いているようだった。
頂上で出会う、
ことばのいらない景色
山頂に立つと、風が変わる。強くて、でも澄んでいる。歩き出すたびに、景色が切り替わる。海。山。空。どこまでが境目なのか、わからなくなる。ただ、広がっている。ただ、そこにある。




……すごいね
なんか、静かになるよ
言葉にしようとすると、かえって足りなくなるような気がした。
帰り道も、旅のつづき
帰りの電車。窓の外は、少しずつ色を失っていく。手元には、お弁当と缶ビール。ほんの少しの満足感と、やわらかな疲れ。そのまま、気づけばまどろみの中へ。
今日は、ここまででいいよね
ちょっと、休もうよ……
遠くで、電車の音だけが続いていた。
Serendipityな旅の余韻
はじまりは、ほんのひとこと。
なんとなく目を覚まして、なんとなく返事をして。それだけで、景色はゆっくり動き出した。決めすぎないこと。寄り道してみること。気になったほうへ、少しだけ進んでみること。その積み重ねが、いつの間にか“思いがけない景色”につながっていく。たぶん、特別なことはしていない。でも―ほんの少し、流れに身をまかせただけで、旅はこんなにもやわらかく、広がっていく。
また行こうよ!
次は、どこにする?
その問いに、すぐには答えない。まだ、この余韻の中にいたかった。
風の気配と、光の記憶だけが、静かに残っている。(おわり)
セレンのあしあと
伊豆高原駅に電車で戻りバスで大室山へ。
PM17:00頃 伊豆急行で熱海へ。(約50分)
PM18:00頃 熱海駅を出発、新幹線で東京へ。(約50分)
ほんの少しだけ、
勇気を出してみて
一歩踏み出せば、
景色はきっと変わるよ!










