波(Pizza Port Nami) Pizza Port Brewing(Pure Projectとのコラボ)

STORY 02|しっぽに導かれて

勇気を出してお家の外へ飛び出したセレン。
ふとしたきっかけで、空き地の“おばちゃん猫”から、少し変わった話を聞くことになりました。

昔ね、この辺りに突然現れた猫がいたんだよ。10年くらい前の話だね。

よそから来たらしくて、人を探してるって言って、毎晩、公園で寝泊まりしてたらしいのさ。

seren

人を……探してる猫?

セレンはびっくりして、おばちゃん猫の顔を見つめました。

でもね、理由を聞いても変なことばかり言うもんだから、
そのうち誰も寄りつかなくなったんだって。

その猫、言ってたんだよ。『私はもともと人間だった』って。

えっ……!

どうしても“自分の姿をした猫”に会わなくちゃいけない、って真剣だった。
カギしっぽが関係しているとも言ってたね。

それって……もしかして、
猫と……入れ替わったってこと?

そうらしいよ。
その猫が言うには―

“猫に話しかけられて返事をしたら、すっと入れ替わってしまった”……ってね。

セレンのしっぽが小さく震えた。

seren

……それ、本当なの?

さあ、どうだかねぇ。でも、
最後にこんなことを言ってたよ。

偶然の出会いが、運命を変える

そう言って、
笑ってたんだけどね……
なんだか、怖くもあってさ。

風がそよいで、草むらが音を立てる。セレンの胸の奥が、ふわっとざわめいた。

その猫はそれから姿を
見せなくなった。
自分を探しに行ったのかもね。

空はすっかり夕暮れ色になっていました。
セレンは名残惜しそうに立ち上がりながら、そっと言いました。

seren

おばちゃんに会えてよかった。
今日はありがとう。

いつでもおいで。
でも……外の世界は、
見た目よりずっと奥が深いよ。
気をつけてお行き。

家の前に戻ると、自分の名前を呼ぶ声が聞こえました。セレンを見つけた人は、目に涙を浮かべて優しく抱きしめてくれました。申し訳ない気持ちと、ほんの少しの安心。でもその時、セレンの中に新しい感覚が生まれていました。

seren

わたし、人の言葉が……
ちゃんとわかる

seren

それに……
話すこともできるかもしれない

次の瞬間、カギしっぽがふっと虹色に光りました。まるで“何か”のはじまりを知らせるように――。

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